佐渡市の歌人で、木喰研究家萩原光之氏が亡くなった。氏の訃報を知り、本棚から氏の著書『木喰さんの佐渡』を引き出してもう一度読み直した。
木喰上人は江戸時代後期の仏像彫刻家で、甲斐の国の生まれ、30年かけて日本廻国を成し遂げ、その彫った仏像は「微笑佛」と呼ばれている。
その木喰上人が天明元年(1781)佐渡に渡り、4年間滞在して島内各地に40体の仏像を残し、110点の書画を残した。木喰上人の佐渡での最後の歌が「四とせ経て今日立そむる佐渡島をいつ来て見るやのりのともし火」である。ここには佐渡への惜別の情にあふれている。今度はいつ来ることができるであろう。再び来ることはないであろう。その通り佐渡へは再び来ることなく、文化7年83歳でなくなった。
その木喰上人は仏像を彫るのみならず、たくさんの和歌を作っている。その歌数560首ともいわれている。その多くが口語で、自嘲的なものが多い。「木喰のいずくのはての行だおれ犬か鴉のゑじきなりけり」自分の最期は旅の途中の孤独死、犬や鴉の餌として尽きる身であるという。
その歌の中で筆者が心魅かれる一首が「皆人の心に咲きし白蓮華花は散りても種は残らむ」である。美しく咲いた花はいつか散る。しかし、その心は種として残る。
木喰上人の花も、萩原さんの花も肉体は滅んでもその業績は種として永久に残るであろう。合掌(ひこぜん)
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