第四小説集『枝雪弾く』を紹介します。
今年の雪は重かった。その重みに堪えず、あちこちに枝の裂けた木の痛々しい白い肌がむき出しになった。それでもその重みに耐えて雪を振り払い、弾き飛ばす枝もある。その雪の重みは人生の病苦であり、生活苦でもある。人々も皆その枝雪を背負って生きている。この小説集はその生と死に向き合うさまざまな人生を描くことに重点を置いた11編の作品集である。
この作品集は大きく三分類できる。一つは若くして病気とけがに向き合う人生を描く「マウススティックの夏」「さよなら 共に歩いた日々」、第二は心の奥にしまっていた闇の部分を白日にさらす分野である「盗作」「裸の背」など。そして最後は貧困と病苦にぎりぎりに追い詰められたわが先祖のルーツを探りつつ、生の根源を極めることである。「枝雪弾く」「縫い代を残す」など。思えば物書きは酷な作業である。人が隠しておきたいことを無理に聞きだし、白日の下に晒そうとする。しかし、スポーツ選手と違って物書きは生涯現役ですごせる。75歳の後期高齢者となっておそらく最後になるはずの小説集である。できたら、辞世の言葉を残しつつ、最後の時を迎えたい。
<目次> | |
1.マウススティックの夏 | 7.嬰児の掌 |
2.さよなら 共に歩いた日々 | 8.父の手押し車 |
3.独り時計 | 9.落ち栗拾うごとくに |
4.盗作 | 10.枝雪弾く |
5.勧誘 | 11.縫い代を残す |
6.裸の背 |
「図書新聞」紙上で連載中の岡和田晃(文芸評論家・ライター)氏「<世界内戦>下の文芸時評・第八回/遍在する「繕うべき綻び」を暴き立てる神話的なアプローチ」の中で、第四小説集『枝雪弾く』も取り上げられましたので紹介します。時評中程に記載されています。ぜひ、ご一読ください。
<本の事項>
書 名:枝雪弾く
書名よみ:エダユキハジク
著者名:高橋 実/著
出版社:雑草(あらぐさ)出版
出版地:長岡
出版年:2015.7.(平成27年7月4日)
ページ数:241p
大きさ:21cm
定 価:2200円
・ご購入を希望の方は高橋実(0258-95-2340)までお問い合わせください。
代金振込み先:郵便振替 00640-6-6258 名義 高橋実
郵貯通帳振込:店番128 普通預金 口座番号 1120518 高橋実
定価 2200円(税込・送料とも)
高 橋 実 小 説 集 | ||
第一小説集 雪残る村 | 第二小説集 紙の匂い | 第三小説集 さつきの花 |
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「文学北都」に発表した「雪残る村」が第52回芥川賞候補作となる。 | この作品集は、私自身が建てる一つの紙の墓、おのれが籠る繭といえるだろう。 | 病気や死がいかに重大であるか、ここにきてようやく知らされることになった。 |
昭和49年8月刊 | 昭和55年11月刊 | 平成2年4月刊 |
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